2008年02月02日

ウォーキングの効用と継続の秘訣

[シンポジウム]
[出演者]
宮下充正先生 日本ウォーキング協会名誉会長 東京大学名誉教授         
樋口満先生 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
村田太一郎さん ウォーキングクラブGNP会長、税理士
[司会] 南茂もも子さん

世界的になったウォーキングの効用
宮下充正先生発言要旨
 GNPということを言ったかどうか、記憶にないが、棺おけまで歩いていくことは願望でこんな立派な死に方はない。
 効用というと、誰でも知っていることだろうが、30年ほど前、60歳以上の年寄りに運動をさせることを考えた。事前に血圧を測り、心拍数も数えて運動後にも同じ計測をしてみた。たたみ半畳ぐらいをまたぐ歩き方。結果が実際には怖かったのだが、世界大戦を乗り越えて60歳にもなった御老人は強く平気だった。これに気をよくして20年前、江東区でウォーキング12週間を始め、歩幅を広げて歩くことを基本とした。これにより、筋肉や心臓が活動し、代謝を高めることになる。
 日本ウォーキング協会は東京オリンピックの年に発足し、年間300万人ぐらいが参加し、全国的な仲間作りになっている。
 世界的な動向としては40年ぐらい前に、競争をしない国際市民スポーツ連盟が結成され、日本も1992年ごろ参加した。世界的な催しが、各国回り持ちで開かれ、歩いた距離の登録や表彰が行われている。
 日本でも鶴岡市のスポーツ振興ということで、4ヶ月で50万歩達成すると、表彰するというような人参をつけて毎年3000人ぐらい達成し、里山歩きやノルディックウォーク(ストックを使って砂浜を歩く)、カンジキをつけて雪山を歩くことをしたりしている。
 総括的には、ウォーキングによる健康には心臓や血管にとって役に立つことは分かってきたが、それによってころっと死ねるかどうかは、よく分からない。医療費の軽減には役立っているつもりだが、これも単に先延ばししているに過ぎないのかもしれない。この辺がこれからの問題で、反省すべき点もあるが、歩くことで気持ちよくなることは事実である。

肥満は今では疫病ともいえる現象
樋口満先生発言要旨。
 早稲田大学には、卓球の愛ちゃんや野球のハンカチ王子が在籍しているが会ったことはない。早稲田大学に来て5年になるが、その前は25年間、国立健康栄養研究所に在籍し、その当時、GNPさんとはいろんな意味で接触があった。
 最近では所沢キャンバスまで来てくれたことがあるが、所沢は起伏が激しく、トトロの森などがあり、歩く環境としては絶好だ。今年、箱根駅伝で早稲田が往路優勝、全体でも2位になったことの一因はこの環境にあったとも言える。それに健康栄養研究所時代、体力測定のデータ作りに協力していただき、研究論文発表に大いに役立っていただいた。
 歩くということは1歳からやっているとも言えるので、50年以上経験があり、そのほかではボートをたしなんでいる。
 健康寿命という言葉があるが、どうも体をよく動かしている方が、ポックリする確立が高く、くよくよして生きているとだらだらと生きるような感じになる。
 私はそのほか健康栄養の分野で諸外国に行くことが多いが、アメリカの油の備蓄は少々危険状態だ。油といってもそれは皮下脂肪のこと。つまり、肥満のことで、今や疫病と言ってもいい。車社会の欠陥とも言えるが、最近では田舎の方が問題が多く、都会に住むもののほうが歩いている。その点、ヨーロッパの方が、よく歩き、ヘルシーな感じである。
 山歩きのような場合、上りが苦しく、下りが楽に見えるが、実際には逆だ。箱根駅伝でも上りが苦しいように見えるが、回復は早い。下りを走った人は、1週間は歩けない状態になる。つまり筋肉のダメージが大変大きい。
 ウォーキングはポックリというより、健康のプレゼントと考えた方がいいかもしれない。ウォーキングクラブGNPの活動はウォーキングの一次機能、二次機能を超えた文化論にまで発展した高次機能を果たし、これからも1000回を目指して発展していただきたい。

足を使い頭を使い五感全体を使う
村田太一郎会長発言要旨
 GNPは本来、国民総生産ということ。宮下先生から「元気で長生きしてポックリと」と聞き、これをクラブ名にして、平成10年1月10日、ウォーキング12週間を終了したものが集まり、ウォーキングクラブGNPを立ち上げた。折角、毎週実施した12週間を継続するためには、毎週実施することにして、年50回。最初から高邁な目的を掲げ、「地球温暖化の防止」と「医療費負担の軽減化」とした。つまり、石油の消費をささやかでも減らすこと。それに病気にならないこと。の二つである。
 活動状況そのものは、この10年間で6,000キロを歩き、出席人員は延で22,000人を超え、会員一人ひとりが歩いた距離の合計は225,000キロ、地球1週を40,000キロとすると五周半歩いたことになる。
 海外ウォークのメーンは北京、上海、西安だった。
 他に有志で実行したスイス、九塞溝、プラハ、ニュージーランド、韓国、ポルトガル等々。
 国内では、最近では奈良に行った。宿泊ウォークを最初から並べてみると、天城、箱根、塩原、沖縄、函館、鳴門、上高地、軽井沢、志賀高原、奥能登、奥入瀬、京都、尾瀬ヶ原、葛城古道、善光寺と多岐に亘る。宿泊ウォークでは旅費が大変。航空運賃やツアー料金の格安を狙い、その上、バスや電車も回数券が使える時は、なるべく使うようにする。私鉄の土休券は重宝している。
 現在、四半期に1度、皆勤の方にささやかな記念品を差し上げているが、だんだん増えている。かつては10人以下が殆どだったが、今では殆ど10人以上。それに年間で25回以上出席された方にも気持だけの記念品を差し上げて、今では殆どの方が該当者。
 少し、偏った考え方かもしれないが、原則として合議制にしなかったこと。その上で、情報の伝達は少しも包み隠さず全員に伝達した。つまり、年間計画を当初に立て、具体的なものは、最低3週分はわかるようにし、かつ実施した内容は、必ず報告した。それから、下見を必要とする例会は必ず下見を実施し、一週前にコース図を会報に掲載したことも役に立った。それに海外に出たり、宿泊の伴う行事があるときには、行けない会員のために代替コースを必ず作った。これは、家庭の事情で遠出ができない方でも参加できるGNPとしての考えであり、かつ遠出をされたい方も参加できるというGNP独自の考え方かもしれない。
 中止したことは殆どない。10/1/17、13/1/27、15/4/5、18/1/21の4回だけ。この中止はいずれも日曜日ないし祭日に実施して取り返した。雨の日がなかったというわけではなく、ただ少々の雨では実施している。昨年のウォーキング12週間では12回のうち、雨で2回中止になったとのこと。同じ土曜日に実施しているGNPでは中止していない。
 この10年、何とか乗り切ったのは、たくさんの方の支援と会員のご協力の賜物。
 今の時代、IT時代といわれ、パソコンで何でも出来る時代になっているが、人間そのものはどんどん退化しているような気がしている。作り出せないものを使って物を作る。その物の効用を発揮させないで捨てる。灰になるまで使うなら値打ちがあるが、使い尽くせないうちに捨てること。これが公害を生んでいる。人間の体も同じだ。右手のない人は左手が自由に使える。手のない人は足が使える。つまり、健常者などといわれる人は、使えるものを使わないで一生を終えることともいえる。
 その内のせめて足だけでも使おうというのがウォーキング。それでいて、足を使うためには頭も使う。五感全体を使う。使っても使っても使い減りのしないこのウォーキングを通じて、ポックリ出来るなら、それが最高の幸せというもの。ウォーキングGNPは、ささやかではあるが、その先駆者として邁進していくつもり。今後、皆様の絶大なご支援とご協力を賜りたくお願い申し上げ、私の決意とします。
 本日は、誠にありがとうございます。
 [2008.1.19 江東区砂町文化センター]

Posted by taichiro at 2008年02月02日 00:19 | TrackBack